リスクをゼロにするのは難しい -STAP細胞から3/11原発事故まで- その2

3度目の3月11日を迎えて今後の日本の科学技術の発展に携わっていく者の一人としてこの話題はどうしても避けられません。
この3年間で原発継続の是非、自然災害に対するリスク管理をどう行っていくべきか、多くの議論がなされました。
今回の原発事故で改めてクローズアップされたのが「我々は1000年に一度の規模の大津波のリスクに備えるべきか?」という問題です。
まずこの問題に取り組むには、「リスクは考慮すべきであるが決してリスクをゼロにはできない」という事実を認識することが重要です。
大地震とそれに続く大津波、原発総電源喪失によるメルトダウン。東電および原子力委員会の自然災害に対する対策の甘さ、そして事故後の対応の甘さは素人が見てもずさんとしか言いようがありません。
そもそも6基の原子炉を同じところに並べて設計することすら「リスクは分散すべし」リスクマネジメントの観点からは疑問視されていました。
1基でもメルトダウンを起こせばその周囲には近づけなくなり連鎖的に冷却不可能な他の原子炉もメルトダウンを起こす可能性が非常に高いのは周知の事実でした。
しかも大津波が来るリスクはある程度わかっていたのに外部電源を高台に設置しなかったのはリスク管理が軽視されてきた証拠です。

ただ今回の事故をもとに原発廃止の方向に簡単に舵を切るのは安直な結論です。
もちろんよりクリーンで安全なエネルギー開発を促進すべきであることは言うまでもありません。
ただ今原発をゼロにすれば日本が現在の経済水準、生活水準を保つことは非常に難しいでしょう。
もう経済大国、科学技術立国でなくてよい、ソニーもトヨタも潰れてもいいし、iPSも米国でやってくれればいいしノーベル賞ももういらないという覚悟があればいいです。
原発ゼロの後に自分たちが国際社会の中でどのような立場に置かれるのかを想像せずに簡単に原発廃止の議論をするのは危険です。

自然災害、事故は必ず起きます。
そしてそれらから起きるダメージをリスク管理によって軽減はできても決してゼロにはできません。
例えば地震そのものに対する対策はしっかりされており今回も地震による原子炉への直接のダメージはありませんでした。
しかし今回の規模の地震が直下型で起こったら原子炉が耐えられたかどうかわかりません。
どれほどのリスク管理を行ったとしてもリスクをゼロにはできないのです。

ちょっと話が逸れたので本題に戻ります。
それでは「1000年に一度の大津波のリスクに備えるべきか?」
この質問への回答は「現在の人々の幸せな生活を妨げない範囲で備える」というのが妥当であると感じます。
例えば「1000年に一度の40m級の大津波がどこからきてもいいように日本全土をスーパー堤防で囲もう」という案に対してどう思われるでしょうか?
これをやればおそらく大津波によって被害を受けるリスクは限りなくゼロに近づくでしょう。
ただこれをやって失うものはなんでしょう?
まず公共事業に莫大な予算がつぎ込まれ国庫を締め付け、当然そのあおりは教育、医療、科学技術など様々な分野が受けます。消費税だって30%ぐらいになるかもしれません。
さらにそもそもそんな壁に囲まれた世界に住みたいのか?という問題です。
今更景観がどうのとか言っている場合ではない、人命を守ることが先決だというのはもっともな意見です。

ただ重要なことはどれだけ高い堤防を建てても大津波被害のリスクを決してゼロにはできないという事実です。
極端な話、太平洋に100万年に一度の規模の小隕石が落ちて100m級の津波がきたら終わりです。
それにもちろん自然災害のリスクは津波だけではありません。河川の氾濫、土石流、崖崩れなど日本に住んでいればいたるところ自然災害のリスクの宝庫です。
これらの対策を均等に行い、しかも教育や医療福祉にもお金を使い、国民の生活に負担のかからない程度の税金でやりくりする。
我々にできることは非常に限られています。

重要なのはこういった議論から逃げず、美しく安全な日本を次世代に継承できるよう必死に努力することではないでしょうか。

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プロフィール

小林哲郎

Author:小林哲郎
皮膚免疫を専門に研究している獣医研究者。
2014年よりアメリカNIHに留学。

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